2010年 01月 12日

10年度診療報酬改定の基本方針を読み解く(医療介護CBニュース)

 来年度に実施される次の診療報酬改定は、長妻昭厚生労働相が中央社会保険医療協議会(中医協)に対して1月中旬にも諮問し、点数配分をめぐる本格的な議論が始まる。中医協による議論は、社会保障審議会(社保審)の医療部会と医療保険部会が昨年12月に取りまとめた「診療報酬改定の基本方針」に沿って進められることになるが、基本方針は「適切な受診」「後方病床」など、あいまいな表現も目立つ。そこで、医療部会の部会長として方針取りまとめに当たった齋藤英彦・名古屋セントラル病院長に、社保審による基本方針の解釈を聞いた。

■基本方針では、来年度の診療報酬改定に係る基本的な考え方の「基本認識・重点課題等」として、「国民一人一人が必要とする医療を適切に受けられる環境を整備するため、医療提供者や行政、保険者の努力」を求める一方、患者や国民にも「適切な受診」などの協力を求めている。

-「適切な受診」とは具体的にどういう意味かを含め、どのような協力が患者側に求められているのでしょうか。

 日本の場合、誰でもどの医療機関にも行けるのはいいことですが、よくいわれる「コンビニ受診」で、どんな症状でも大きい病院に殺到すると、風邪のような比較的軽症の患者の対応に追われ、本来はそこでしか診断や治療ができない重い病気を診る余裕がなくなってしまいます。そうならないように、軽症なら地域の診療所を利用するなど、患者一人一人に「適切な受診」を心掛けてほしいということです。
 また、病気は医療者側が一方的に治すのではなく、患者本人もよく理解して、協力してもらわないと治すことはできません。生活習慣病が好例で、生活習慣・食事・運動にも気を付けていただかないと、薬だけでは治りが悪いのです。糖尿病などで「食事にもっと気を付けて」とか、「アルコールの飲み過ぎは肝臓に悪い」と注意しても、実際にそれを守ってもらわなければ、いくらでも医療費は増えてしまいます。ほかにも「病院ショッピング」といって、幾つもの医療機関にかかると、同じ検査を何度もすることになり、医療費はかさみます。医療現場の疲弊を防ぐ観点からも、医療費の無駄遣いをなくす観点からも、「適切な受診」の必要性を示し、患者に協力を促しているのです。

■「基本認識・重点課題等」ではまた、「診療報酬が果たすべき役割を明確にしつつ、地域特性への配慮や使途の特定といった特性を持つ補助金をはじめとする他の施策との役割分担を進めていくべき」としている。

-「診療報酬が果たすべき役割」と「補助金をはじめとする他の施策」とは、具体的にどういうことでしょうか。

 診療報酬は、診療行為・医療行為ごとに決められた点数に基づいて支払われるものです。これに対して補助金は、ある特定の事業をするために出るお金です。診療報酬は診療行為と直接関連する部分をカバーし、関連しない部分を補助金でカバーします。
 例を挙げれば、救急医療部門に「医療クラーク」を配置し、勤務医の負担軽減を行っていると、診療報酬では「医師事務作業補助体制加算」を算定できます。一方で、医療クラークになるには研修を受ける必要があるので、研修期間中に代わりの職員を雇う必要があります。そのために掛かるお金に補助金を充てるイメージです。ただ、補助金は診療報酬のように恒久的なものではなく、基本的に単年度制なので、不安定さが付きまとうという問題点があります。
 診療報酬や補助金以外の施策としては、例えば市民病院や県立病院など自治体病院への一般会計からの繰り入れがあります。ただ、昔は自治体も財政が豊かだったので、一般会計から赤字を補てんすることができましたが、財政状況が厳しくて、それができなくなる自治体も現れています。そのため、つぶれる自治体病院も出てきているのです。

-補助金にも、他の施策にも問題点があるようですが、それらと診療報酬の「役割分担を進めていく」とは、どのようなイメージですか。

 日本の場合、診療報酬が低く設定されていて、これだけでは経営が成り立たないところに根本的な問題があります。診療報酬は実際に原価計算をして設定しているのではないので、それだけで必要経費をすべて賄えるようには必ずしもなっていないとわたしは考えています。「おおよそ、これぐらいあればいいだろう」ということで決められ、ここ何年間かはどんどん下げられているので、医療機関が赤字になるのも不思議ではありません。それを補助金や他の施策で補てんしようという意味です。
 ただ、診療報酬を上げて補助金に頼る部分を少なくするのが理想だと、わたしは思います。医療機関の経営を安定させるには診療報酬を上げるしかないのではないでしょうか。そこで問題になるのが財源です。診療報酬の財源は、税金と保険料と患者による窓口負担です。だから診療報酬を単純に上げると、保険料と窓口負担も増えます。患者負担はこれ以上は上げられません。保険財政も苦しい現状では、税金で診療報酬の引き上げ分をカバーする以外にないと、わたしは考えています。

■基本方針では2つの「重点課題」と4つの「視点」が示された。重点課題の1つは「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」。この中で、こうした医療を適切に提供できる体制をさらに充実させることの必要性を指摘し、そのためには「急性期後の受け皿としての有床診療所も含めた後方病床・在宅療養の機能強化、手術の適正評価」などを検討すべきとした。

-「後方病床」などの具体的な内容を含め、医療再建への考え方を教えてください。

 「後方」とは時間的意味。急性期病院後の役割を担う意味での「後方」で、慢性期病院の療養病床や有床診療所などのことです。急性期病院は今、DPCへの移行などに伴って平均在院日数が2週間程度になってきています。実際には、この期間に完全に治るわけではないので、リハビリテーションが必要なら療養病床に、もっと長いリハビリが必要なら介護老人保健施設(老健)などに移ります。つまり、急性期の受け皿になる場所です。
 また「在宅療養の機能強化」は、「訪問看護の機能強化」とも言い換えられます。各地域でネットワークを密にして、必要なサービスを提供できるようにするという意味は、「連携強化」も含みます。
 さらに「手術の適正評価」ですが、まず日本は一般的に手術に対する診療報酬が非常に低いので、もっと高くして適正に評価しないと、とても維持できないのが現実です。手術をするには手術室もいるし、無菌でなくてはならないので設備投資も伴います。それに医師の技術料や材料費もあるので、現状だと全体として赤字になってしまいます。
 仮に外科の手術料が上がれば、急性期病院の収入がそれだけ増えます。診療報酬は何に使ってもいいので、それを外科医の給料を増やすことだけでなく、医師全体の待遇改善やスタッフの新規雇用に充てれば、病院にある程度ゆとりができて、医療安全も向上できるし、職員の疲弊も少なくできます。
 今挙げたようなことがうまく機能するようになれば、医療を適切に提供できる体制づくりや、医療の再建につながるということです。

■基本方針では、診療報酬改定の4つの視点として、「患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点」「医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点」などを挙げている。

-患者からみて分かりやすい医療の視点では、「医療の透明化や、診療報酬を患者等に分かりやすいものとすることなどを検討する」ことなどが取り組むべき課題として提示されましたが、具体的には何を指しますか。

 「医療の透明化」に最も重要なのはインフォームドコンセント、つまり治療方針に対する説明と同意です。十分説明して理解してもらった上で、患者にも方針決定にある程度参加する流れを促すことだと理解しています。もう一つの診療報酬を分かりやすくするというのは、レセプト並みの明細書の発行などで、どのような診療行為にどのくらいの医療費が掛かっているのかを分かりやすく説明することを指しています。

-医療と介護の機能分化と連携が、質が高く効率的な医療を実現するという点について教えてください。

 例えば、脳卒中を起こして救急車で急性期病院に搬送され、診断や治療を受ける。その後、一応は急性期段階を脱したものの、半身まひで言葉がしゃべれないので、リハビリが必要だとすると、今度は療養病床があるリハビリテーション病院へ行きます。そこでよくなれば、その後は介護保険が適用される老健に移って、在宅復帰を目的に長期的にリハビリを行う。認知症などで家庭での介護が難しいなら、特別養護老人ホームに行って介護サービスを受けるといった具合に医療と介護、さらに福祉も含めつながっているので、機能分化と連携を進めるべきだということです。その連携がないと、不連続になってしまいます。急性期から慢性期、介護も含めた体制でケアを実施することで、回復につながりやすくなり、それが効率的な医療の実現につながるということです。


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by m8xogxsie8 | 2010-01-12 10:21


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